亜急性甲状腺炎について
亜急性甲状腺炎とは
 亜急性甲状腺炎とは、甲状腺に炎症が生じ、その結果、発熱や甲状腺に一致する痛みを認め、甲状腺ホルモンが高値となる病気です。甲状腺ホルモンが高値となる原因は、甲状腺が炎症で破壊されることによるため、炎症が落ち着けば自然に甲状腺機能は改善します。上気道炎などを前駆症状として認めることが多いため、ウイルス感染が原因の可能性が高いと考えられていますが、その原因ウイルスなどはまだ同定されていません。

診断方法
 症状が特徴的で甲状腺に一致する圧痛、発熱を認め、他に程度の差はありますが動悸・発汗過多・体重減少といった症状が出現します。これらの症状を認めた際、血液検査で甲状腺ホルモン(Free T4、Free T3)の上昇、TSHの抑制、炎症反応(CRP、血沈)の上昇を認め、TSHレセプター抗体(TRAb)、抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は原則として陰性の結果となります。これらに加え、頸部超音波検査で特徴的な低エコー域を認める場合、亜急性甲状腺炎と診断できます。参考になる所見として、低エコー域からの細胞診における多核巨細胞出現、放射性ヨード摂取率低値などの所見があります。また、疼痛の部位、超音波での低エコー域が移動するクリーピングと呼ばれる所見も参考となります。

治療法
 原則として、甲状腺ホルモンの上昇は自然軽快しますので、自覚症状の強さに応じて対応が変わってきます。疼痛も軽度で、甲状腺ホルモンの上昇も軽度の場合は、経過観察のみ、あるいは非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)での対症療法で問題ありません。甲状腺ホルモンが高く、動悸、手指振戦(手の震え)、発汗過多といった症状が強い場合は、βブロッカーという種類の薬で症状を緩和することができます。疼痛や発熱の程度がひどい場合はステロイド内服での治療を行います。

予後
 ステロイドを使用しない場合、疼痛・発熱などの症状は数週から1か月程度かけて徐々に改善します。甲状腺ホルモンの安定までは2~4ヵ月程度かかります。
 ステロイドで治療をする場合、内服開始後数日で疼痛・発熱が落ち着くことがほとんどです。しかし、ステロイドで症状がおさまっても、ステロイドの減量・中止で再燃(症状が再度出現すること)する場合があります。
 一般に亜急性甲状腺炎は再発することは稀とされていますが、再発することもあります。

無痛性甲状腺炎について
無痛性甲状腺炎とは
 無痛性甲状腺炎とは、甲状腺に対する免疫の異常が原因で甲状腺が破壊され、甲状腺内の甲状腺ホルモンが血液中へ漏れ出し、甲状腺ホルモン値が高値となる病気です。これに伴い、動悸、汗をかきやすい、手が震える、疲れやすいと言った症状が出現します。亜急性甲状腺炎と異なり疼痛は伴いません。女性の場合、出産後に発症することがあります。また、ストレスや免疫系に影響を与えるような病気・薬剤などでも引き起こされます。背景に、慢性甲状腺炎(橋本病)があることが多く、通常は1か月程度で甲状腺ホルモンは低下していくため、抗甲状腺薬の投与は禁忌です。自覚症状が強い場合には、自覚症状を和らげることを目的としてβブロッカーを使用します。

診断方法
 バセドウ病との鑑別が重要であり、TSHレセプター抗体(TRAb)、頸部超音波検査での甲状腺実質の血流の程度、放射性ヨウ素摂取率などを用いて診断します。

経過
 無痛性甲状腺炎と診断された場合、基本的には経過観察のみで甲状腺機能は改善していきます。動悸や手の震えがひどい場合はβブロッカーを使用します。回復過程では、一時的に甲状腺ホルモンが低い時期がしばしば認められます。多くは低下の状態から甲状腺機能正常の状態まで改善することが多いですが、一部、甲状腺機能低下の状態が持続する方もいらっしゃいます。そのような場合は、必要に応じて甲状腺ホルモンの補充を行います。

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